Zac Fukuda

隈研吾『新・建築入門』

建築家は饒舌だ。大きな本屋に行けば、専門書の中ではおそらく「建築」が一番スペースを占めている。日本で建築学科は、工学部もしくはデザイン学部の属することが多い。工学部の人間、いわゆる理系の人間は文章を書くのが苦手とされている。デザイン学部の人間は感覚的で、書くことは苦手で描くが上手な人が多い印象だ。

建築家は描くことも書くことも数字を扱うこと全てに長けている。(全ての建築がそうというわけではないが。)何とも多能な職業だろうか。

プログラミング・Web開発系の本には、『新・建築入門』のような本はない。あくまでもコンピューター・サイエンスの一旦であるプログラミング・Web開発には、考察・意見・解釈が入り込める隙間はほとんどない。

プログラミング・開発はある種、手法という面もあるので、アートとして取り上げ、そこに批判を持ち込むことはできるかもしれないが、中々そのような本のニーズはないだろう。どうしても「できるようになる」本になってしまう。

グラフィックデザインであればいくらか建築と同じく意匠という要素があるため、『新・グラフィックデザイン入門』のような本があってもよいところだが、そう多くはない。建築家と同じレベルでグラフィックデザインを書くことができるのは原研哉を始め、多くても片手で数えられるくらいだろうか。どうしてもそこには「言葉にする」ことへの障壁があるように感じられる。

饒舌な建築家から「言葉」を学ぶというのが、個人的な試み。